上腕・肘・前腕の標準的な手術を網羅した一冊

Orthopaedics Vol.28 No.9(2015年9月号) BookReview

書評者:酒井昭典(産業医科大学整形外科学教室)

 本書は,2010年から刊行されている《整形外科手術イラストレイテッド》シリーズの7冊目(最新巻)として2015年7月に刊行された.本書の特長は,実際の手術手技を精緻なイラストで示しながら,そのポイント,注意点,臨床的意義について,ひとつのアプローチや手術法あたり概ね5ページ前後にまとめて記載されていることである.視覚的に手順を追って術野の展開と手技を確認しながら手術の様子や実際の動きが理解できるようになっている.さらに,付属のDVDで動画をみることができる.
 また本書では,上腕・肘・前腕の主な疾患に対する標準的な手術法が網羅されている.骨折に対する整復固定術,靭帯損傷に対する縫合・再建術,変形性肘関節症に対する観血的授動術,運動機能再建術,離断性骨軟骨炎に対する鏡視下手術,TEAなどについてカラーイラストと手術写真,X線写真を多数用いて具体的に解説されている.手技の“ポイント”と“コツ”,基本的事項をまとめた“サイドメモ”が分かりやすく書かれている.
 外科医は高い手術技能を有することが必要である.そのためには,安全で確かな手術手技の伝承と自ら手技を研鑽する不断の努力が必要である.しかし,若手医師は,系統的に手術手技を学ぶ機会は少なく,実際には,臨床現場で経験した個々の症例から習得することになる.習得のレベルと手技の正確度は,経験した症例内容と指導医の教え方に大きく依存することになる.手術手技の標準化が必要である.
 手術を予習するうえで,手元に置くべきものは解剖学書と実践的な手術書である.本書に目を通しながら術前に手術をシミュレーションすることができる.整形外科の専門医だけでなく,初期研修医や後期研修医などの若手医師,手術室の看護スタッフの方々にも大いに役立つ手術書である.日本整形外科学会専門医試験における動画を用いた口頭試験にも有用であろう.日常臨床ですぐに役立つ,お勧めの一冊である.