丁寧なイントロダクションと実験法がフレンドリーに説明されている

実験医学 Vol.30 No.8(2012年5月号) Book Reviewより

評者:木南 凌(新潟大学大学院医歯学総合研究科分子細胞医学専攻遺伝子制御講座分子生物学分野)

 本書は疾患モデル解説付きの実験書であるが,趣向が少し変わっている.遺伝子やタンパク質に関する溢れる情報,次世代シーケンサーの普及,多くのノックアウトESクローンの作出という時代背景に立って,解説されているという点である.疾患モデルとしての遺伝子改変マウス,統一規格化されたマウス表現型解析についての総論と,個々の疾患マウスモデルについての臓器別解析法・実験法との組み合わせがおもしろく,それが本書の意図と言っていい.いくつかの疾患項目を読んでみると,丁寧なイントロダクションと実験法がフレンドリーに説明されている.困ったときには担当の執筆者に連絡をとるのも,一つの方法かなと思わせる親近感もあった.きまじめそうに見えるがユーモラスな山村先生と,何事にもエネルギッシュな若菜先生が絶妙にブレンドした豊かな香りが感じられる.
 自分が興味をもつ遺伝子のノックアウトマウスが,かならずしも予想した表現型を示すとは限らない.また,たとえ予想した表現型が観察されても,違った角度から検討すると,もっとおもしろい予想外の表現型が見つかるかもしれない.予想を外れた専門外の研究領域に踏み込むのにはためらいがある.阻む壁の閾値を下げるのが本書の目的である.ノックアウトESクローンの整備といった環境がよくなれば,より本質に迫った研究ができる.が,それだけより複雑な解析方法が要求され,しかもより高い成果が期待される.大変な時代になったのだから,工夫が必要だ.本書はその手助けをしてくれるはずである.