まさに膠原病診療のすべてが凝縮された一冊

Derma No.190(2012年4月増刊号) 書評より

評者:五十嵐敦之(NTT東関東病院皮膚科)

「手のひらを見ただけで皮膚科医はSLEと診断できる」と医学部最終学年時の皮膚科入局説明会で当時の医局長が語られた一言は今も鮮明に覚えている.この言葉を聞いたときは甚だ懐疑的であったが,皮膚科を専攻し膠原病診療に少なからず携わってきた半生を振り返ってみて,この言葉は正しいと断言できる.皮診は膠原病とは切り離せない関係にあり,早期診断のきっかけとなるだけでなく予後をも占うことのできる重要な臨床所見である.皮膚観察のプロである我々皮膚科医は膠原病診療で一歩アドバンテージを持っているわけだから,この立場を生かさない手はない.しかし,診断・評価だけに留まらず治療に深く介入していくためには,責任編集の佐藤伸一教授が「序」でも述べておられるとおり皮診のアセスメントだけでは不十分で,内臓病変など膠原病全体について実践的な知識を持っておかなければならない.診療に窮した場面に遭遇したとき,実地診療に即した判断が求められるが,一般的な教科書では情報量が不十分であり,何を紐解けばよいのか悩むことが多い.こういったときに大いに活用できる書として本書はお勧めできよう.

 本書の特色はまず,膠原病の基礎的事項から診断・治療まで見やすく,コンパクトに網羅されている点である.特に重要なポイントはAdviceやTopics,Boxなどのコラムを用いて目にとまるように簡潔に記載され,また比較的新しい用語についてもKeywordとして解説されており,読み手を疲れさせない工夫がなされている.時間のある時に学習書として用いるのもよいだろうし,索引も充実していることから日常診療での必要時に調べたいときにも重宝しそうである.また,病因論等では最新の知見も紹介され,さらに最終章では膠原病の新規治療についても言及しており,第一線の情報に触れることができる.こうして改めて目を通してみると,私が医師になった四半世紀前と比べて頭に入れておくべき新しい知識がいかに増えているかに驚かされる.

 大病院であっても膠原病内科が存在しないことは未だ珍しくない.内科等と連携して治療を進めていく際に皮膚科の存在感をアピールできるよい機会であるが,この好機に膠原病診療における重要ポイントが凝縮された本書が活用されることを望みたい.さらには,皮膚科医にとどまらず研修医から一般医に至るまで膠原病に接する機会のある先生方にとっても,疾患への理解を深める上でお勧めできる一冊である.