主要徴候からの鑑別診断に強い味方になってくれる1冊

日本医事新報 No.4463(2009年11月7日) BOOK REVIEW 書評より

評者:田妻進(広島大学病院総合内科・総合診療科長・教授)

 外来診療とは実に奥が深い。そもそも医療の基本は外来での〝診たて〟であり、とりわけ、診断はその中心である。したがって、迅速かつ精度の高い診断が、外来診療の質を担保する。その観点から、本書のタイトル〝早わざ外来診断術〟は実に魅力的である。

 さて、〝早わざ〟とは誰しも望むところではあるが、〝わざ〟とは〝技〟であり、〝術〟でもあるとともに、〝業〟にも通じる。これら①スキル、②アート、③プロフェッショナルを意識しながら本書を評すると、次のようになろうか。

 (1) 「主要徴候」から鑑別診断をリストする道標となる。この作業(修行)を繰り返しながら、疾患スクリプトの引き出し(drawer)が豊富になる期待感に誘われる。ただ、挙げられている主要徴候の項目が豊富である反面、〝鑑別診断テクニック〟の情報が割愛されていて、読者自らが汗を流すべき点を提案しているとも受け取れる。

 (2) 「主要徴候」は時として複合的であるとともに、その的確な聴き取りも決して容易ではない。その点、本書の冒頭に列挙された〝使い方シミュレーション〟は、読者の立場に配慮した演出として好感が持てる。外来診療(時にはベッドサイド)で直面する主要徴候に関して、自身で鑑別診断が挙げられない場合に、マメ辞典のように用いるのに優れており、また、表や写真も豊富で読者に親切である。

 (3) ただ、あくまでも主訴に対する鑑別診断の確認が主体であり、その次のステップ(実際的な鑑別プロセス)には、適当なリリーフを待機させる必要がある。これは読者の側のビジネスである。蛇足ではあるが、〝ポケットサイズ〟というには、少し大きめのポケットを用意しないと収まりそうにないサイズである。

 日常診療の外来という土俵で本書を有効に活用するには、主要徴候を診たてるコミュニケーションスキルが前提となるように思えてならないが、ある程度の臨床に関する基礎的知識を持っていても、着目した臨床上の特徴から診断へのアプローチができない場合に、心強い味方になってくれる1冊であることは疑う余地がない。