完成度の高い内科学のテキスト 医学生にも研修医にも臨床医にも活用していただきたい1冊

レジデントノート Vol.12 No.3(5月号) BOOK REVIEWより

評者:野村英樹(金沢大学附属病院総合診療部)

 多くの臨床医の学習はアメーバのようなものである.次々と新しい疾患概念が提唱され,診断法が発達し,治療法が開発されていくなかで,とりあえず必要とされる方向に知識を伸ばしていく.使われた知識は定着するが,使われない知識は退縮する.いつの間にか,縮んではいけないところまで縮んでいるのではないかとも思う.臨床医の知識には本来,もっとしっかりした骨格が必要なのだ.

 医学知識の骨格は,EBM全盛の時代にあってもなお,病態生理である.どういうメカニズムで疾患が生じているのか,なぜその疾患ではそのような所見を認めるのか,なぜその疾患にはこの薬剤が効くのか.しっかりとした病態生理の骨格の上に肉付けされた知識は,本当に必要なときに活かされる.およそ医学のテキストというものには,このような知識の骨格を作る力が何よりも求められているのではないだろうか.

 本書は,その意味で非常に完成度の高い内科学のテキストである.もともと内科学のスタンダードテキストとしてその読みやすさや内容のムラのなさに定評があった同書であるが,今回の改定から参加された塩澤昌英氏の「編集協力」の力も大きかったのではないかと私は推察している.国家試験を控えた医学生でこの方のお世話になっていない人はいないと思われるが,実は塩澤先生は,「Dr.一茶」として知られるカリスマ国試予備校講師である.筆者は米国Wisconsin大学でラットの腎不全感受性遺伝子の研究をなさっておられた頃に塩澤先生と知り合ったが,当時から太平洋をまたにかけて国試予備校講師の仕事も引き受けておられた.先生が研究にかけておられた情熱と同じように,教育にも熱い想いを語っておられたことをよく覚えている.実は,医学の学習における病態生理の重要性は,そのときに塩澤先生から教わったのである.

 医学生の皆さんには,ぜひ本書を活用して,まずは脊椎動物のようなしっかりした内科学の骨格を身につけてほしい.また研修医の皆さんには,臨床現場で新たな経験をするたびに本書を見直し,国家試験までに作り上げた基本骨格を,現場で求められるさまざまな動きに対応できるしなやかな骨格へと成長させていただきたい.そしてもちろん,私を含めた臨床医も,筋力(エビデンス)だけに頼っていたらいつの間にか筋肉を支える骨格が多発骨折をきたしていたなどということのないよう,本書を活用して骨粗鬆症を予防していきたいと願っている.