著者らが積み上げてきた「1分間指導法」の集大成

medicina Vol.49 No.7(2012年7月号) 書評より

川名明彦(防衛医科大学校内科学 教授)

 レジデントが学ぶべき専門知識や技術は膨大である.彼らが成書を読み,最新の文献をチェックして知識を得ることはもちろん重要である.しかし病棟や救急外来で,患者さんの病状を評価し,素早くアクションを起こさなければならない場面では,優れた先輩医師や指導医のちょっとしたアドバイスがより貴重な指針となることも多い.また,このように差し迫った場で学んだことは一生忘れないものである.ただ残念なことに,当直や救急の現場で,いつも優れた指導医がいてくれるわけではない.さらにレジデントともなれば,一人で判断し,行動しなければならない場面も多い.そのような臨床の現場で,レジデントに対して迅速かつ適切なアドバイスをくれる,優秀な先輩医師のような役割を果たすのが本書である.
 本書は,「指導医が研修医に,『1分間指導法』を実践している場面をイメージして作成」されたという.本書を編集した吉澤,杉山両医師は「教え上手」で有名である.私は,彼らがX線写真などの前で研修医にちょっとしたミニレクチャーを始めると,周りに何人もの研修医が集まって来て,そのレクチャーに聞き入っている様子を幾度も目にしたことがある.著者らがこれまで積み上げてきた,この「1分間指導法」の集大成が本書であると言えよう.
 本書は「教科書の縮刷版のような『読む本』ではなく,必要な情報にすぐアクセスできる『実践的なテキスト』にすることをめざした」とある.私は書評を書くため本書を通読してみたが,比較的短時間で読了できる上,「読む本」としても充実していると感じた.本書を通読することで,現代の呼吸器診療のスタンダードを短時間に復習することもできる.その意味で,レジデントばかりではなく,呼吸器臨床のエッセンスを再確認したいシニアドクターにも有用である.
 多くの分担執筆者の合作ということもあり,項目ごとの趣が若干異なっているが,それはむしろ先輩医師たる各執筆者の個性ということもできよう.また,本書はあくまでもポケットマニュアルであり,ぜひ本書で学んだことをさらに成書や学術論文をひもといて膨らませていただきたい.編集者が「この本に書かれた知識をもとに,英知につながる知恵の糸口をつかむことを期待している」と述べているのは,そのことであろう.