多色刷りで図や表が表現されており,非常に分かりやすく,見やすい

麻酔 Vol.63 No.6(2014年6月号) 書評

書評者:花岡一雄(JR東京総合病院名誉院長)

本書は《新戦略に基づく麻酔・周術期医学》シリーズの3冊目として刊行された最新刊である。木シリーズの監修は森田潔岡山大学学長,また,本書の専門編集者は川真田樹人信州大学教授であり,総執筆者60名,総ページ数320ページという熱意にあふれる本書が誕生したのは,2014年2月10日である。
 本書を手に取ってまず目に付くのは,多色刷りで図や表が表現されており,非常に分かりやすく,見やすいことである。本書の構成は8章からなっている。
 導入部分である第1章の周術期疼痛管理の現在の動向から始まり,第2章の手術に関連する痛みについては手術侵襲による痛み,創傷治癒過程における痛み,いわゆる術後痛,そして遷延性術後痛に分類して説明してある。第3章では,周術期の痛みを評価するために,術前からの評価,術中の評価,術後の評価に分けて解説してある。第4章では,周術期疼痛の有害作用として,循環系への作用,呼吸との相互作用,内分泌・代謝への作用,交感・副交感神経機能への作用,消化器系・泌尿器系への作用,中枢神経系への作用,免疫系への作用など,考えられるかぎりの有害作用について言及してある。
 ここまで,周術期疼痛についての基礎的知識を整理したうえで,第5章では,いよいよ周術期疼痛管理の実際について各手術別で解説してある。心臓外科手術,呼吸器外科手術,上腹部手術,下腹部手術,整形外科手術などの主たる手術における周術期疼痛管理の実際と,特殊な領域としての小児,産科,高齢者を取り上げ,それぞれの特殊性について分かりやすく解説してある。第6章では,さらに具体的に周術期疼痛治療法に触れて,薬物としてオピオイド,消炎鎮痛薬,COX-2阻害薬,アセトアミノフェン,ケタミン,トラマドール,α2アゴニスト,カルシウムチャネルα2δサブユニット遮断薬について説明を加えたうえで治療法として,患者自己調節鎮痛(PCA)とIV-PCA,硬膜外鎮痛と硬膜外PCA,脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔と脊髄くも膜下鎮痛単独法,末梢神経ブロックなど実際的鎮痛方法を解説してある。加えて,今後,臨床応用が期待される薬物として,nerve growth factor(NGF),transient receptorpotential vanilloid 1(TRPV1),tumor necrotic factor-α(TNF-α),interleukin-6(IL-6),カンナビノイド,ATPなどについて実に理解しやすく解説してある。
 第7章では病室以外でのICU,ER,検査室での疼痛対策を取り上げ,最終の第8章では周術期管理として取り組む疼痛対策をAcute Pain Serviceとしての取り組み,周術期管理チームとしての取り組み,遷延性術後痛に対するペインクリニック外来での取り組みを挙げて説明してある。
 TopicsやColumn欄が随所に掲出されており,山楸のようなピリッとした気分が味わえるとともに,周術期における疼痛管理の重要性も認識され,本書の特色が強調されている。
 麻酔科医のみならず,手術に携わるすべての医師・研修医に自信をもって勧めることができる教科書である。