経験を積んだ人も長年の自己知識の確認を「今すぐに」行う際にも有益

理学療法ジャーナル Vol.47 No.6(2013年6月号) 書評より

評者:福井勉(文京学院大学保健医療技術学部理学療法学科)

 理学療法士や作業療法士になろうとする学生や新人の臨床家にとって,運動器の機能解剖は当然クリアしなければならない問題である.人参や玉葱を知らないままカレーライスを作ることが難しいのと同様,筋や神経の名称,機能についての知識なしに病態は語れないし,何より臨床的考察の発展性への大きな壁となる.つまり,運動器の知的基盤とも言うべき筋や神経の名称,機能,神経支配については,反射的に想起されたうえに人の運動への3次元的イメージが要求されている.これらの基礎体力をつけるためには,反復を伴う学習が余儀なくされ,多少の味気なさを伴うものである.本書にはそこに味付けを盛り込もうとした優しさが感じられる.
 例えば,指の外転に関しては「じゃんけん,パーはハイ(8, 1)リスク」として,髄節レベルを覚えるゴロが盛り込んである.その他,いくつか紹介すると,「ハムストは,四股(4, 5)合図(1, 2)」「膝を,胃に指す(1, 2, 3, 4)腸腰筋」「三頭筋,軟派(7, 8)な腕立て伏せ」など,がある.ゴロにはすべてイラストが付き,各筋がページ単位で構成され,さらに「MEMO」として解説が加わり,イメージをしやすく,わかりやすくなっている.
 理学療法士や作業療法士が学ばなくてはならない機能解剖学の学習経過においては,詳細な解剖学や運動学の成書を紐解き,あるときは模型などを用い,自分の身体を用いた体感性や,該当する筋のイメージを立体化する作業が欠かせないと思う.その総まとめや復習を行う際に本書があれば,確認作業にはうってつけである.特に髄節レベルの確認には優れていると考えられる.
 本書は“くだけた”機能解剖学の書籍であり,多くの暗記に拒絶反応を示す学生や新人にできるだけ而白く覚えられるようにまとめたこと,自力でマスターするための入門書であることが,序文に記されている.しかしポケットサイズであるため,新人だけではなく経験を積んだ人も長年の自己知識の確認を「今すぐに」行う際にも有益である.
 著者の高橋仁美先生は言わずと知れたわが国を代表する呼吸理学療法の先達である.残念ながら私自身は高橋先生の講義を拝聴した経験がないが,あえて予想すれば聞き手を飽きさせない真心をお持ちになる楽しい講義をしてくださるのであろう.著者が本書を上梓する背景には,知識を確実なものにすることを念頭に置かれているが,その先には,「さらに基礎知識を応用し,臨床に還元するところに力を注ぎなさい」と言われているように感じられた.