まさに「読める!」胸部X線画像診断アトラス

日本胸部臨床 Vol.71 No.11(2012年11月号) 書評より

評者:迎 寛 先生(産業医科大学呼吸器内科学教授)

 この本はまさに自分がこんな本を作ってみたかった,こんな本で勉強したかった,と思う一冊である。胸部X線写真は,現在でも健診や入院時ルーチン検査として一般的な検査の一つであり,専門以外の医師でも日常診療において判断が必要とされる検査である。胸部X線写真での異常を見落とさないためには,読影に関するしっかりとした知識が必要であり,特に専門以外の医師においては理解しやすい本が必要となる。また,著者が述べているように呼吸器専門医の実臨床にとって,「病態や病理と関連づけた読影」はきわめて大切なことである,その点,本書では,一枚の胸部X線写真からできるだけ多くの情報を引き出すような工夫がなされている。また,読影に際しての大きなポイントがまず提示された後,所見の詳細な解説が数多くのシェーマ図やCT画像を関連させつつ様々な側面からなされている。本文も箇条書きで,明解に要点がまとめられているためにわかりやすく,学生や初心者から呼吸器専門医まで幅広い層で有効な活用が期待できる。
 この様に,臨床現場で呼吸器臨床医が実際にとる思考のプロセスを辿るように,胸部X線写真の情報を整理するという手法が用いられ,さらに病態についての解説と鑑別すべき疾患の確認が効率よくなされている点は本書の特筆すべき特長である。これは本書が,放射線科医によってではなく,呼吸器内科医が豊富な臨床の経験をふまえて執筆,編集した試みが大きな成功をおさめた結果ではないかと思う。本書のイメージとしては,経験のある臨床医が一枚の胸部X線写真を見て読影する際に,頭の中でどのように異常をとらえ,どのように評価して鑑別疾患を挙げ,病態や疾患を鑑別していくかが見えるような感触である。さらに,多くの日常診療で遭遇する代表的な疾患ごとに,画像読影法に加え,病態生理,病理所見,特徴的な臨床的所見や検査所見,鑑別すべき疾患や病態,進めるべき検査などが具体的かつ丁寧に解説されている。
 本書の使い方については,一度通読して読影の進め方や異常所見のとらえ方,代表的疾患の特徴的画像所見を系統的に学習する事で,医学生から研修医,医療スタッフ,呼吸器内科や放射線科以外の非専門医はもとより,呼吸器専門医にとっても日常診療に役立つ知識が身に付く。また,本書は疾患ごとにまとめられていることから,実際に類似の症例に遭遇したときに改めて読み直す,というような使い方にも向いている。胸部X線写真やCTの入門書としては実臨床に直接結びついた丁寧かつ分かりやすい本であり,何度でも読み直そうと思える本であるとともに,実際の診療の場で活用することで,読影力,ひいては臨床力が格段に上がるであろう。