子どもの医療と療育にかかわる者の必読書

チャイルドヘルス Vol.18 No.1(2015年1月号) 書評より

書評者:仁志田博司(東京女子医科大学名誉教授)

 これまでの診断と治療がほとんどであった医療の世界に,患者のamenityの重要性が認識されたのは,ごく近年になってからである。筆者がかかわっている新生児医療においても,物言わぬ赤ちゃんが実はたくさんのシグナルを養育者に発信しており,それに耳を傾け答える看護と医療の提供が,児の発育発達に大きな意味があることが学問的にも明らかにされ,それに基づいたdevelopmental careが取り入れられようになった。
 本書は,同様にこれまでの小児医療の現場においてともすると忘れられがちであった「子どもの心」に目を向けた養育にかかわる種々の職種の役割と,その意味を網羅したわが国最初のスタンダードとなる書である。創生期であるところから,諸外国で制度化された耳新しいChild Life SpecialistやHospital Play Specialistの名称が混在していたが。その重要性を読み取ってわが国独自で「子ども療養支援士(Child Care Staff : CCS)」を養成し,認定する組織を立ち上げた先駆者の慧眼に敬意を表する。
 また本書では,CCSとその業務においてオーバーラップし,擦り合わせが不可欠な多くの職種(医療保育士,臨床心理士,クリニクラウン・おもちゃコンサルタント・プレイリーダーなどのボランティア)の役割と協力体制にも言及している。さらにCCSはその歴史が浅いところから,医師や看護師の理解が不十分でその機能が十分に発揮できていない現状にも触れているが,本書のコラム「病棟文化に変化を起こそう」に見るごとく,CCSは新しい時代に必然であり,子どもの医療にかかわる施設の責任者は,その理念と重要性を理解し,CCSの活動に関連する上記職種の有機的な統合のシステム構築を図ることが必要となろう。
 最後になるが,本書の副題「医療を受ける子どもの権利を守る」にあるごとく,子どもの医療の現場では“最も助けを必要とする子ども”にかかわる私たちがその声を代弁することが求められている。これはエレン・ケイが夢見ていた21世紀こそ「子どもの世紀」を体現することといえよう。本書は,まさにそのためのガイドブックであり,子どもの医療と療育にかかわる者の必読書といえよう。


専門知識と技術を解説 子ども本来の力を再認識

教育医事新聞 2015年(平成27年)1月25日

 子どもの視点に立って子どもの心の育ちを視野に入れた小児医療の重要性が注目されるなか、医療を受ける子どもたちの発達や成長を支える療養支援の専門知識と技術をわかりやすく解説した「ガイダンス 子ども療養支援 医療を受ける子どもの権利を守る」(3500円+税、中山書店)が出版された。
 本書では日本でも浸透しつつある、医療を受ける子どもの心理的・社会的支援を行う専門職とその役割を解説。医療における子どもの権利の具体的内容や子ども療養支援士等のいる総合病院の取り組みなどを紹介しながら、遊びやプレパレーションを通じた実践など子どもの発達段階に応じた具体的な療養支援の理論と方法を示している。
 編集者の田中恭子・順天堂大学医学部准教授は「小さくても子どもには子どもなりに考える力も目標を達成しようという力もあります。これまでの小児医療の現場では、病気や治療のことは分からないだろうという大人の思い込みで子ども自身の力を最初から枠にはめていたことがないでしょうか。医療関係者だけでなく親御さんや教育関係者にも本書を読んでいただき、子ども自身の持つ本来の力を再認識すると共に、医療を受ける子ども自身の権利について、それぞれの立場で具体的に出来ることは何であるのか、考えることのきっかけにしてもらえたらと思います」と話している。


子どものしなやかな力を育み伸ばす

メディカル朝日 2014年10月号 BOOKS PICKUP

子どもなりの理解であっても、病気や障害を理解して回復に向かう力(レジリエンス)を持たせることが、治療において重要だという。医療を受ける子どもを保護の客体ではなく、医療の主体的参加者として捉え、子どもの人権を踏まえながらレジリエンスを尊重した対応を行うために必要な考え方と方法論を解説した。小児医療従事者にとどまらず、広く医療に関わる人に。

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