糖尿病学の急速な進歩を通覧するのに適している

「垂井清一郎:Book Review スマートな糖尿病診断と治療の進め方,内科109(2), p.360, 2012」より許諾を得て転載

評者:垂井清一郎(大阪大学名誉教授)

 シリーズ全10巻(中山書店)は,今回の『スマートな糖尿病診断と治療の進め方』まで,すでに3冊が刊行されたことになるが,全体の企画・編集にこまやかな工夫が施されており,読者を惹きつけるに違いない.

「糖尿病学」は,さまざまな分野の知識を包含する広い医学の領域であるが,今回のシリーズでは必ずしも網羅的なスタイルをとらず,ことに大切で,最近注目されているところに次々にスポットをあて,併せてその周辺領域も取り上げるというかたちをとっている.目を通していくと,自ら最新の知見にも触れることになるように配慮されている.平素,糖尿病の患者を少なからず扱っておられる医家の方々も,近年における急速な進歩を通覧するのに適しているであろう.

 このシリーズでは,トピックス欄やコラム欄が,ある自由さをもって重要なポイントに配置されており,突っ込んだ知見も提供されるよう工夫がなされている.たとえば,本書『スマートな糖尿病診断と治療の進め方』における「HbA1cの国際標準化」などの記述は,HbA1cの数字の奥にある本質を理解するうえで,格好の読みものであろう.
 
 また,シリーズ既刊の『最新インスリン療法』の巻に示された「インスリン自己注射治療における皮膚をつまむことの大切さ,注射後の保持時間への注意」などは,心遣いの行き届いたユニークな記載であろう.さらに『糖尿病合併症―鑑別ポイントとベスト管理法』の巻に収載の「α-リポ酸によるインスリン自己免疫症候群(IAS)」などの項目は,IASが本邦で発見された病態であることを考慮しても重要なポイントであり,おそらく他書にはいまだ十分には記載されていない内容と思われる.

 今後のこのシリーズの展開に期待したい.