まさに実戦的な仕様になった書籍

耳鼻咽喉科・頭頸部外科 Vol.84 No.10(2012年9月号) 書評より

評者:高橋姿(新潟大学医学部耳鼻咽喉科教室教授)

 本書『実戦的耳鼻咽喉科検査法』は,タイトルが示す通りの,まさに実戦的な仕様になった書籍である。一口に耳鼻咽喉科検査法と言っても,耳鼻咽喉科・頭頸部外科で扱う臓器・組織は多彩であり,聴覚・平衡・嗅覚の感覚器から鼻腔・咽頭の呼吸器,口腔・咽頭・喉頭・気管へ続く消化器がある。さらには顔面神経,三叉神経,舌咽・舌下神経などの脳神経,唾液腺や甲状腺ならびに頸部の疾患も対象となる。それらのすべての領域の検査法を網羅した成書は多数あるが,非常に厚くて重いものや,分冊となって取り扱いも不便であり,多忙な日常診療にあっては実用的な書物とは言い難い。
 専門編集者の小林俊光教授は,「序」において,「超多忙な耳鼻咽喉科開業医や第一線の勤務医の先生方に役立つ」ために,「①手間暇がかからず,②大がかりな装備を必要とせず,③被験者の負担も少ない検査法に重点を」置いたと記している。その結果,数多の検査法の中から絞り込まれた項目が,従来とは異なる序列に記載されることになったと思われる。検査法の選択には,単に臨床現場での使用頻度だけでなく,鑑別診断における重要性も加味されている。
 気づいた点を列挙する。まず,第1章がCT,MRIの画像診断から始まり,複雑といわれる耳鼻咽喉科領域の正常解剖を解説している。次いでX線検査,さらに内視鏡診断に続く。また,内視鏡診断では「良性疾患,とくに小児における利用法」として,検査時に協力が得られづらい,正確な所見を取るのが困難な小児の内視鏡検査法を単独に取り上げている。
 耳管機能検査の良否は,鼓室形成術の成否を左右するほど重要である。しかし,従来はそれほど大きく扱われることはなかった。本書では,鼓膜形成術の術前検査としての耳管機能検査を詳しく解説し,耳科手術への適応の考え方を具体的に述べている。
 第5章の聴覚機能では,古典的な音叉による検査法も取り上げ,その意義を改めて解説している。また,従来は開業医があまり行っていないOAE,ABR,ASSR,アブミ骨筋反射検査の他覚的聴力検査を取り上げ,その実施を促している。耳鳴検査法では検査法のみならず,TRTなどの治療法まで言及している。また,検査法の説明だけでなく,検査法の組み合わせによる感音難聴の鑑別診断法も興味深い。
 第10章の「呼吸機能をみる」では,耳鼻咽喉科固有の鼻腔通気度,睡眠時呼吸障害に加えて,主に内科医が扱う呼吸機能検査も取り上げ,上気道から下気道まで気道全体の呼吸機能の理解を促している。
 それぞれの項目ごとに,単に検査法の記載に留まらず,検査の結果得られる異常所見の読み方,鑑別疾患,さらには治療法にまで言及していてきめ細かい。どの項目でもイラストや写真が多用されていてわかりやすい。さらに,欄外にその項のまとめや豆知識といった一言メモがあり,読む者の理解を助ける工夫が随所にある。まさに実戦的である。
 さらに,本書においてはいろいろなところにコラムやアドバイスの記事が書かれていて,それが非常に有用である。コラムでは,新しい疾患概念(auditory neuropathy)や検査(ASSRを理解する),検査機器紹介(知っておきたいオプションのめまい検査法),診療のコツ(機能性難聴の検査と心因性難聴診断のコツ)などが,わかりやすい読み物として掲載されている。これらのアドバイスやコラムを,診療時間外に,時間に余裕ができた時に拾い読みすることで,耳鼻咽喉科検査法の最新情報を知ることができる。日常臨床における知識が広がることは必至である。
 最後に,付録として「患者への説明用イラスト集」があり,患者さんに理解しやすい図が多数掲載されている。検査結果の説明の際に,ここにあるイラストをコピーし,説明内容を追記しながら説明に用いれば,患者さんへのインフォームドコンセントの助けになり,良質な医療の実践にもつながる。
 多くの耳鼻咽喉科専門医に本書の活用をお奨めしたい。


体系化された教科書よりも実践的で、多忙な臨床医でも読みやすい

全医協連ニュース(JMC NEWS) No.125 蒼翠号(2012年7月号) 書籍紹介より

浦野正美(浦野耳鼻咽喉科医院理事長)

 このたび、中山書店から《ENT臨床フロンティア》シリーズが刊行されました。この企画は耳鼻咽喉科の日常診療に直結するテーマに絞った、全10巻のユニークなシリーズです。従来の体系化された教科書よりも実践的で、多忙な臨床医でも読みやすく、日常診療の中で本当に必要と考えられる項目のみが、わかりやすく解説されています。今回、『耳鼻咽喉科の外来処置・外来小手術』、『実戦的耳鼻咽喉科検査法』の2冊が同時に出ています。
『耳鼻咽喉科の外来処置・外来小手術』では、耳鼻咽喉科の一般的な診療所で行われる外来処置・小手術にテーマを絞り、第一線ですぐに役立つよう実践的・実用的に解説してあります。各手技の要諦を簡潔に示し、かつ写真やイラストレーションを豊富に用い、視覚的に理解しやすい構成となっています。巻末にはインフォームドコンセントに際して利用できる説明文例やイラスト集も収載されています。ベテラン専門医の座右の書となるとともに、これから耳鼻咽喉科専門医をめざす研修医にも大いに役立つ技術指南書になるものと思います。
 また『実戦的耳鼻咽喉科検査法』では、超多忙な耳鼻咽喉科医が時間をかけずに正しく診断して、最適な治療方針を決定するための検査法を厳選して解説してあります。大がかりな装備を必要とせず、被検者の負担も少ない検査法を実戦的に使いこなすための1冊です。
 この《ENT臨床フロンティア》シリーズは、ほぼ2~3か月に1冊のペースで刊行される予定です。全10冊をまとめて予約すると予価の10%引きになる特典もありますので、ぜひ、ご一読ください。